2016年9月12日

労災型、最高裁に上告受理申立て理由書を提出

「高裁判決は、因果関係の判定手法に関する最高裁判例違反」

5月26日、大阪高裁大法廷(佐村浩之裁判長)が被害者の控訴を棄却しました。石綿の規制を怠った国と加害企業・クボタの責任を問うことに背を向けるひどい判決でした。
この裁判は、尼崎市のクボタ旧神崎工場に下請け業者として石綿運搬作業に従事し肺がんで亡くなった運転手の遺族が国とクボタに、耐熱材として石綿製品を使用し暴露を受けて肺がんで亡くなった溶接工の遺族が国に、それぞれ損害賠償を求めていたものです。

原告の山本さんと藤原さんは、弁護団と相談し、「高裁判決は誤りだ。泣き寝入りはできない」と、最高裁に上告する準備を進め、このたび、最高裁に「上告受理申立て理由書」を7月28日に提出しました。

高裁判決は、大企業・国の意向に沿う形で事実をねじまげたもの

「理由書」では、山本さんの労災死亡は、裁判官が、クボタ旧神崎工場内のアスベスト飛散が深刻だったことを無視して「(アスベスト粉じんばく露が)格段に低い」との推論をたて、自らの推論に沿わない事実を無視して組み立てたものにほかならないと指摘。したがって、高裁判決は、「認定事実を総合的に用いて評価するという因果関係の判断手法に関する最高裁判例」に違反するものです。しかも、不法行為ないし安全配慮義務違反の因果関係の解釈適用の違法があり、総合考慮を支えるべき経験則違反に該当することを主張しています。
高裁が間接事実を総合的に適正に評価すれば、クボタの加害責任は明らかです。まず、①山本さんがクボタの下請け業者として旧神崎工場の出荷作業場で仕事をしていたこと、②旧神崎工場では大量のアスベスト粉じんが飛散していたこと、③出荷作業場は屋外にあったために工場敷地内の飛散粉じんに容易に暴露しえたこと、④敷地内だけでなく工場周辺にも粉じんが大量に飛散していたこと、⑤クボタ労働者の労災認定数の多さ、⑥クボタ下請け業者にも石綿による肺がん事例が多くあること、⑦クボタ旧神崎工場周辺住民にも多大な被害者がいること、⑧クボタ自身が工場から1km以内に1年以上居住していた者であれば石綿被害に遭うことを自認していること、⑨クボタ旧神崎工場が発がん危険性の高い青石綿を大量に使用していたこと、⑩山本さんには胸膜プラークが認められ、主治医も石綿との因果関係を指摘し、厚労省もアスベストによる肺がんであると労災決定をした事実、などです。
これらを総合すると、山本さんの肺がんの原因は、クボタからのアスベスト飛散のばく露であることは明確です。しかし、大阪高裁は、あたかも最初から「クボタの加害責任、国の規制責任はなかった」という偏った判決を書くために、事実をねじ曲げたことを上告理由書では強調しています。
藤原さんについても、アスベストによる肺がんとして労災認定されているにもかかわらず、「(アスベスト以外でも)肺がんを発症した可能性が十分にあり、因果関係を認めるに足りない」と事実を無視したものであり、労働者の生命や健康よりも経済活動を優先した許せないものと指摘し、高裁判決を差し戻すよう求めています。

以上