2017年3月14日

第12回総会議案

2017年3月11日の第12回総会で、確認された議案は、以下の通りです。

2016年度のまとめ

(1)労災型、最高裁が「上告棄却」決定の暴挙

労災認定されても、「石綿濃度は低かった」と、誰の責任も問わない高裁判決を追認。大企業・国の意向に沿う、労働者の命を軽視した不当決定。
肺がんで死亡した、クボタ旧神崎工場に石綿を運搬したトラック運転手の遺族がクボタと国に、耐熱材として石綿製品を使用していた溶接工の遺族が国に、それぞれ損害賠償を求めていた裁判(尼崎アスベスト訴訟・労災型)で、大阪高裁大法廷(佐村浩之裁判長)が、2016年5月26日、被害者に背を向けるひどい判決(被害者に、いつどこで、どの程度のアスベストに暴露したのかを、何十年もさかのぼって、具体的かつ詳細に立証を求めるという、不可能を強いる極めて不当な判断)を出したために2016年7月28日に最高裁に上告していましたが、11月10日、最高裁第二小法廷は「本件上告を棄却する」と決定し、敗訴が決まりました。
最高裁は9月16日、第二小法廷で審理を開始すると通知。わずか2か月足らずの「審理」でした。
環境型(山内・保井裁判)の最高裁審理は9か月近くに及んでおり、今回の労災型の最高裁審理がいかに拙速だったかがうかがえます。
「尼崎の会」は、最高裁からの「審理開始」通知を受けて、持ち回りの運営委員会で、最高裁への署名の開始を確認し、「高裁判決は、企業と国の意向に沿う形で事実をねじまげたもの 審理の差し戻しを求めます」との署名用紙を作成し、10月の運営委員会で「署名目標2万。第一次として11月末までに1万筆」として、構成団体や全国に呼び掛けて署名の取り組みをスタートさせていました。
「11月末までに1万筆の署名」をと、急な取り組みでしたが、尼崎医療生協が5,000筆以上、全国の団体や個人からの返信用封筒で3,000筆以上が集まり、1万人の署名の目途も立ち、12月上旬に最高裁担当書記官に届ける準備を進めてきましたが、極めて残念ながら、提出に至りませんでした。
労災型の大阪高裁判決は、アスベストに曝露したことを認めた労災認定と矛盾する判断でした。しかも、労働者が、何十年も前の石綿曝露の具体的な事実を、具体的かつ詳細に立証を強いる不当な判決でもありました。この最高裁決定は、こうした不当な高裁判決を確定させるものであり、強く抗議する声明を発表しました。協力していただいた団体、個人のみなさまには、「上告棄却」の報告と協力への感謝、署名活動の中止をお知らせしました。
私たちは、国やクボタをはじめとする石綿使用企業の責任を明確にしない限り、真の石綿被害者の救済につながらないことを訴えて、環境型に続き、労災型もあきらめずに裁判闘争を闘ってきました。
不当な結果となりましたが、石綿曝露による被害者は、今後も益々増え続けることが予想され、今なお続く深刻な石綿被害者の救済のために、国と石綿関係企業に対し、被害者に対する医療と生活面への全面的な補償制度の確立を求めるとともに、石綿被害者が真に救済されるため、裁判闘争を含む闘いを継続し、被害者に寄り添う救済活動を続けます。

(2)引き続き、被害者に寄り添い、救済に全力をつくす

2016年度の新規相談件数は7件でした。その多くはクボタ旧神崎工場が操業していた小田地域に居住していたか、通学・通勤をしていた人たちでした。
相談に繋がる機会は、「尼崎の会」構成団体や会員の紹介、「尼崎の会」のホームページを見て、などです。
2006年の石綿救済法施行当時は、多くの場合、環境再生保全機構に認定申請すれば約2カ月で認定結果が出ていましたが、今日では審査に3、4カ月、半年以上という時間がかかり、生存中に認定決定がされることは稀になってきました。
それでも、被害者遺族に寄り添い、解決まで全力をつくす努力を続けています。
国は、「環境再生保全機構」への申請の「時効」をなくす判断をしましたが、たとえ中皮腫で死亡しても、病理組織検査など医学的な確定診断が求められ、肺がんに至っては、死亡後に数年するとX線フィルム、CT画像等が処分され、医学的資料が整わず、申請すらできないケース、申請しても審査にたどり着かないケースもあります。統計上は「取り下げ」と仕訳されます。
いわゆる「クボタショック」の翌年(2006年6月)に、国がつくった「石綿健康被害救済法」は、国が責任を認めた賠償制度でなく、責任を曖昧にした「救済」法で、死亡時の支給額は葬祭料込みで300万円足らずの低水準に抑えられており、申請に対する認定率は、中皮腫でも85.4%、肺がんでは48.6%、全体でも74.5%(2016年12月31日現在)と低い水準となっています。「クボタショック」直後に環境大臣が「隙間のない救済」を約束していましたが、「制度はつくったが完全救済はしない」というものです。
しかも、石綿救済法で「認定」された被害者の医療費は全額国が負担すべきですが、国(環境再生保全機構)が負担しているのは、自己負担分のみで、医療費の8割以上は国民健康保険財政からの持ち出しとなっているのです。
私たちは、引き続き、石綿救済法の抜本的な改善(幅広い認定、労災並みの賠償金、ハイリスク者の恒常的な検診制度の確立、医療費の全額を国負担など)に力を尽くします。

(3)国・加害企業の責任を問い、完全救済をめざす

私たちの運動のスタートが、アスベスト被害者の掘り起しと救済、有効な検診制度の確立、そして、国が規制を怠った(むしろ、積極的にアスベスト使用を奨励した)ことによる被害の拡大の責任、クボタが製造工程においてアスベストを有害であることを認識しながら工場周辺に撒き散らかせた責任を問うことからでした。クボタ旧神崎工場を中心とした小田地域に被害が集中し、今後も増え続ける懸念があったからです。
クボタは、最高裁で加害責任が明確になったにも関わらず、いまだに山内さんへの謝罪はありません。もっとも、クボタは環境型の裁判を通じて「50年の経過後に『排出行為に無過失責任』を負わせるのは、経済活動の自由及び財産権に対する侵害で許されない」と主張していましたから、謝罪する意思はないのでしょう。「いのちを金で買う」のがクボタの姿勢でしょうか?
クボタは、「現状では、健康被害の原因が、旧神崎工場における石綿の取り扱いであると特定する根拠を見出すまでには至っておりませんが、旧神崎工場から石綿が飛散しなかったとは言い切れず、旧神崎工場の近くにお住まいの方に影響を及ぼした可能性は否定できないと考えております。しかしながら、健康被害の原因が未だ十分に明らかでないと考えるとしても、治療を受けておられる方やご家族の皆様方の厳しい状況への現実的な対応として、従来のお見舞金制度から一歩踏み込む必要がある」として、環境再生保全機構の「認定」を前提に、「救済金として、最高額4,600万円、最低額2,500万円をお支払い致します」として、加害責任を曖昧にしたまま「救済金」を支払っています。しかし、機構の「認定」被害者全員に支給しているわけではなく、支払いを拒否した事例もあります。
クボタは、資本金840億円、総資産は2兆4,768億円、2015年3月期の営業利益は2,041億円を超える日本を代表する大企業の一つです。
クボタは、人口密集地の旧神崎工場で1954(昭和29)年から95(平成7)年までの41年間にわたって23万トン(中皮腫を発症するリスクが500倍とされる青石綿8.8万トンを含む)を超える大量のアスベストを使用し、石綿セメント管や建材を製造してきました。そして、製造工程から発 生したアスベスト粉じんを工場周辺に撒き散らしてきたのです。クボタ旧神崎工場周辺のアスベスト被害者は、アジア最大の規模となっています。この深刻な犠牲の上に、今日のクボタがあるのです。
社会的影響力をもつ大企業のクボタは、加害責任を真摯に認め、被害者全員に、正式に謝罪すべきです。

(4)アスベスト被害の風化を許さず、被害実態を全国に発信する

2016年度、「尼崎の会」のニュース「アスベスト被害からいのちを守る」をNo.35号からNo.40号まで、6回発行しました。
私たちは、被害者からの相談のたびに、職歴や居住歴、家族構成などを可能な限り詳細に聞き、家族全員(独立して生家から離れた家族も含めて)のアスベスト健診を勧めています。
アスベストによる疾患は、アスベストを吸い込んで20~50年経過して発症します。「1回検診を受けて異常がなかったから大丈夫」ではありません。前回の検診で全く異常がなくても、半年後には片肺全体にがんを発症したという事例もあります。
構成団体では、深刻なアスベスト被害の広がりを受けて、学習会を開催したり、各地の環境保護団体に講師として招かれ、アスベストの特性や被害の深刻さを発信してきました。
「尼崎の会」参加団体も、全国的な会議や交流会でアスベスト被害の深刻さと今なお続く被害の実態を訴え、また、大阪、京都建設アスベスト訴訟の傍聴支援も続けるなど、全国各地の運動と連携しました。

(5)国・市の責任で、疫学調査と、継続した検診が受けられる仕組みづくり——尼崎の中皮腫発症は全国平均の10倍以上

2017年2月6日に、尼崎市は「平成27年 人口動態統計の概要」を発表しました。これによると2015年の中皮腫による死亡は41人(男性26人、女性15人)。次ページのグラフのように、増加傾向は加速しています。全国的には約1,400人が中皮腫で死亡しており、10万人に1人の割合、尼崎は1万人に1人と10倍以上の深刻さです。
私たちは、かねてから、尼崎市に対して、深刻なアスベスト被害の疫学調査を急ぐとともに、「①アスベスト疾患発症がピークを迎えるのは、2028年頃といわれている。石綿健康被害救済法には検診制度が欠けている。尼崎でのリスク調査受診者の実人数は多くなく、市民への受診の働きかけが重要である。『受診しなかった理由』の多くが『前回異常がなかったから』『自覚症状がないから』。アスベストによる肺がん、中皮腫等は、突然発症する特徴を持っていることなどを、市民に分かりやすく説明し、継続した受診者増の対策を取ること。②いつまでも「リスク調査」でなく、有効な検診制度の確立を国に求めること。③尼崎市内で定年まで働き、故郷に帰って生活している人が少なくなく、全国どこでもハイリスク地域で過去に生活していた元市民が検診受診を受けられる制度をつくるよう、国に求めていただきたい。国の制度ができるまで、例えば、尼崎市で肺がん検診を復活させるとともに、ハイリスク者には『石綿健康管理手帳』のようなものを発行し、毎年の検診を促すなど、経年的な検診で、早期発見・早期治療に繋げることが可能となる制度を設けること。④尼崎市独自の『石綿健康管理手帳』にもとづく検診受診医療機関を大幅に増やすこと」などを求めてきました。
本来は国がやるべき施策ですが、自治体にも憲法25条2項による責務があるのは当然のことです。
私たちは、尼崎市に対して、「相談活動を通じて、クボタ・旧神崎工場周辺の小中学校、具体的には小田南中学校の卒業生の中皮腫発症事例が6~7件ある。市としても把握していると思うが、近隣の小中学校、高校卒業生全員に、市の責任でアスベスト検診を漏れなく受けるよう、周知を徹底すべきではないか」と要請しました。
これに対して、尼崎市の保健企画課、成人保健担当は「そういった事実は把握している。全員に周知という点では、個人情報保護との関係で難しい。市報等で周知を繰り返したい」と答弁。私たちは「市報では文字が小さすぎて見逃してしまう。該当者に対して、超ハイリスク地域の学校に通っていたこと、今は大丈夫でも、20~50年後に中皮腫等の発症の可能性があること、早期発見であれば治療法が不可能ではないこと、1回だけの検診でなく、毎年の検診が必要なことなどを知らせようとすれば、個別に郵送等で徹底して知らせる努力が求められているのではないか。クボタ旧神崎工場の大量なアスベスト飛散を見逃してきた市の責任で行うべきだ」と再度求めましたが、「個人情報保護法があるので、困難である」などと、要求を拒んでいます。
堀内照文衆議院議員をはじめとする共産党国会議員団は尼崎市議団とともに、2016年11月24日、環境省、厚労省など政府関係者と交渉。クボタ近隣の学校卒業生に対するアスベスト健診の個別受診勧奨については「卒業者名簿を持っている教育委員会自身が受診勧奨を行う通知を行った場合、その費用を環境省が負担することは可能」(12月7日、堀内事務所への環境省の石綿健康被害対策室主査)との答弁を引き出すなど、一定の前進がありました。超ハイリスク者への周知徹底は、尼崎教育委員会の姿勢にかかっています。
憲法25条は、①すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。②国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならないと、国民の生存権の権利と、国(地方自治体)の責任を定めています。市民の「公衆衛生の向上及び増進」は尼崎市の責任です。「個人情報保護法」を口実に、ハイリスクの市民を放置することは許せません。引き続き、各政党や市議会会派への要請を行うとともに、共産党市議団、国会議員団とも連携し、個別に周知徹底させるため、対市交渉を続けます。

2017年度の重点課題

(1)引き続き、被害者に寄り添い、救済に全力をつくす

いわゆるクボタショックの翌年に、アスベスト新法(石綿救済法)が「施行」され、クボタが「救済金」制度を発表し、「アスベスト被害者はみんな救済される」との誤解が広がっています。たとえ「中皮腫」、「アスベストによる肺がん」と診断され、環境再生保全機構に認定申請しても、認定されるのは7割に過ぎません。
事務所では、基本的に常駐体制を取っています。事務局員が事務所に詰め、相談にのっています。新規相談はもとより、これまで寄せられた相談者のフォローなど、引き続き、被害者に寄り添い、申請から認定に至るまで、被害者とその家族とともに、あきらめずに救済に全力を尽くします。

(2)国・加害企業の責任を問い、完全救済をめざす

クボタをはじめとする加害企業、アスベストの使用を後押しし、健康への有害性がわかっていてもアスベストの使用を放置してきた国の責任を明確にさせることなしに、アスベスト被害者の真の救済はありません。
国は、泉南アスベスト国賠訴訟で責任が認定(確定)されても、大阪や京都の建設アスベスト訴訟で国の責任が断罪されても、石綿救済法を「責任の有無を問わずに救済措置を実施する性格」と位置づけています。クボタも、山内さんへの賠償責任が最高裁で決定されても、いまだに謝罪はありません。
国の責任を明確にすれば、「石綿救済法」を抜本的に改善(指定疾病の拡大、認定基準の緩和、労災並みの補償など)させ、被害者の完全救済、ハイリスク者の健康管理を国の責任で行わせることが可能となります。加害企業の責任を明確にすることで、石綿救済法の「救済金」大幅増額、健康管理の財源を、加害企業による「特別拠出金」を増加させることができます。
全国の仲間と、継続した国・加害企業の責任追及に取り組みます。

(3)アスベスト被害の風化を許さず、被害実態を全国に発信する

アジア最大のアスベスト被害を出しているクボタ旧神崎工場。2028年をピークに被害の拡大が見込まれています。ハイリスクの街・尼崎で育ち、働いた人たちが、定年退職後の帰郷や転勤などで全国に散らばっています。単位労働組合や労働組合全国組織の中で、退職組合員等のその後の健康管理(検診)、アスベスト被害者の掘り起こし、全国規模での相談体制の確立のための交流が必要と痛感します。尼崎からあらゆる機会を利用して、被害の実態を発信します。
深刻なアスベスト被害は、これからも続きます。「クボタショック」の震源地・尼崎で、アスベスト問題を「風化」させないためには、学ぶことが必要です。各地で学習会を開催し、問題を共有しましょう。「会」が講師を引き受けます。
いのちと健康を守る全国センターなどの全国的なネットワーク・連携がどうしても必要です。医師・弁護士等の専門家との連携をより強固なものにしていきます。

(4)国・市の責任で、疫学調査を急ぎ、継続した検診が受けられる仕組みづくり

私たちが早くから求めてきたアスベスト被害者の疫学調査については、大阪大学が文科省の助成を受けて2015年度から17年度までの3年間の調査をスタートさせました。尼崎市も中皮腫死亡小票などの基礎データの提供、聞き取り調査の協力依頼等、できる限りの協力をすることになっています。
私たちは、尼崎市に対して、ハイリスク地域に住んでいたり、通園、通学していた住民・元住民を全員に尼崎市独自の「健康管理手帳」を発行するなど、経年的な健康管理が確実にできるような仕組みをつくることを求めてきました。
2016年3月3日付で、尼崎市は、リスク調査事業に指定されていた鳥栖市、奈良県、横浜市、羽島市、北九州市と連名で、環境省に対して「石綿ばく露の可能性がある者の健康管理についての要望」を提出しました。このなかで、継続した検診が受けられる「恒久的な健康管理システムの創設」を求めています。
国が「責任」を認めていない現状では、実現は容易ではありません。しかし、私たちの粘り強い運動もあって、深刻な被害が出ている自治体がこのような「要望」を提出したことは、大きな励みとなります。
引き続き、ハイリスク者の経年的な健康管理制度の確立を求めます。
今、安倍政権の下で、司法(裁判所)が国民の命や権利を守る立場でしっかり審議されているのか極めて疑問です。従って、今後も裁判闘争を続けると同時に、市政、県政、国政で、アスベスト被害者の真の救済、今後の検診や健康管理に全力を挙げる勢力を前進させる闘いも重要であり、ともに力を尽くしましょう。

以上